本装置は,点眼薬や眼軟膏などの液体・半液体医薬品の使用状況をモニターするシステムです。現在市販されている服薬支援装置の多くは,錠剤やカプセル剤,あるいは1回分ごとに包装された分包散剤を対象としており,設定した時刻になると1回分の医薬品を取り出して服用を促す機能を備えています。しかし,眼科で使用される点眼薬や眼軟膏などの液体・半液体医薬品の使用状況を管理・記録できる装置は,まだ開発されていません。
そこで,従来の医薬品管理方法では把握が困難であった点眼薬や眼軟膏などの医薬品にも対応可能な医薬品使用モニターを開発しました。本装置では,RFID(Radio Frequency Identification:無線周波数識別)と電子天秤を組み合わせることで,医薬品の種類を識別するとともに,使用状況を自動的に検出します。さらに,クラウドと連携することにより,患者の医薬品使用状況を遠隔から確認できるシステムを構築しました。
図1に開発した医薬品使用モニターを示します。本装置には,小型シングルボードコンピュータであるRaspberry Pi 4を搭載し,電子天秤,RFIDリーダ,温湿度センサ,磁気センサなどを制御しています。また,服用・使用予定時刻や未服用・未使用の通知は,タッチパネルディスプレイに表示されます。
装置上部には医薬品を載せるテーブルを設け,その下部に一辺約20 cmのRFIDアンテナを配置しています。各医薬品にはRFIDタグを取り付けており,タグ内部には固有の識別番号を保持する小型アンテナが内蔵されています。RFIDタグはパッシブ型であるため,バッテリを必要としません。
医薬品の使用記録はクラウド上のデータベースに保存されます。保存されたデータは,本人だけでなく,家族や医療従事者など,あらかじめ登録された利用者がWebアプリケーションを介して遠隔から確認できます。

図2に,点眼薬(ソフトサンティア)および錠剤(エミネトン)の容器にRFIDタグを取り付け,それぞれを使用した際のRFID検出状態と重量変化を示します。図2上段のRFID検出結果では,ONは医薬品容器が装置上のテーブルに置かれている状態,OFFは使用のために容器を持ち上げた状態を表しています。下段には電子天秤で測定した重量変化を示しています。RFIDによって医薬品の種類を識別し,重量変化と組み合わせて解析することで,どの医薬品がいつ使用されたかを判定できます。この使用履歴はクラウド上のデータベースに自動保存されます。
本装置で使用した電子天秤の最小表示は0.001 gであり,1滴当たり約0.03~0.05 gである点眼薬の重量変化を十分な精度で検出できます。このため,点眼回数や使用量を高い精度で記録することが可能です。

医薬品の使用記録は,クラウドサービスであるAmazon Web Services(AWS)上のデータベースに保存されます。図3に,Python用オープンソースWebアプリケーションフレームワークであるStreamlitを用いて作成したWebアプリケーションの画面を示します。本アプリケーションでは,点眼薬の使用履歴を時系列グラフとして表示するとともに,現在の残量,累積使用量,平均使用量などを確認することができます。これにより,患者本人だけでなく,家族や医療従事者も遠隔から使用状況を把握することが可能となります。

論文
加藤尚弥, 内田裕久 他,”RFIDと電子はかりを用いた医薬品使用モニター装置の開発”, 医療機器学 94(6) 603-609 (2024).
学会発表
加藤尚弥, 内田裕久 他,”RFID と電子はかりを用いた医薬品使用モニタ装置の改善とクラウドサービス利用”,日本医療機器学会大会、2025/6/13.
