ドライアイをはじめとする眼表面疾患の診断では,涙液膜の安定性や瞬目(まばたき)機能の評価が重要です。ドライアイは涙液膜の恒常性が破綻することで発症する疾患であり,涙液膜の不安定化は代表的な診断指標の一つとされています[Craig J. P. et al., The Ocular Surface, 15(3), 276–283 (2017)]。そのため、TBUT(Tear Break-Up Time)、非侵襲性BUT(NIBUT)、干渉縞解析などが重要な評価項目とされています。しかし,これらの評価は専門的な検査装置や検査者の経験に依存することが多く,簡便かつ定量的に評価できるシステムの開発が求められています。
本研究では,瞬目動作と涙液膜の状態を非接触で計測し,眼表面の状態を定量的に評価するシステムを開発しています。
瞬目検出
瞬目検出実験では,LED光源とCCDカメラを用いて開発した検出機器により,眼周辺の撮影を行いました。画像処理により上下眼瞼間距離をリアルタイムに測定し,開瞼度(まぶたの開き具合)が30%未満になった状態を閉瞼,70%以上になった状態を開瞼と定義して判定しました。
この実験では、最後に最大開瞼時間の測定を評価するため,被験者にまばたきをせずに開瞼状態を維持してもらいました。このような方法で取得したデータから,瞬き頻度,最大開瞼時間,および総閉瞼時間割合を算出しました。
図1に,1分間計測した開瞼度の時間変化を示します。通常の瞬目だけでなく,意図的に長時間閉眼した場合でも,開瞼度は30%未満まで急激に低下し,まぶたの動きを正確に検出できることが確認されました。図1の実験結果では,最大開瞼時間10.8秒,瞬き頻度17回/分,総閉瞼時間割合14.7%という結果が得られました。

涙液膜の評価
涙液膜の評価では,涙液膜の安定性を示す指標である干渉縞の破壊過程を解析しました。被験者には瞬き後,約30秒間開瞼状態を維持してもらい,眼表面の動画を撮影しました。
取得した動画に対して画像解析を行い,角膜領域の輝度を3段階に分類した後,高輝度領域の面積比の時間変化を算出しました。その結果を図2に示します。
本実験では,瞬き後約4秒で開瞼状態となり,高輝度領域の面積比はしばらく一定に保たれました。その後,約21秒以降から面積比が急激に減少し,涙液膜が徐々に破壊される様子を定量的に評価できることが確認されました。図2には、特定のデータに対応する画像を示していますが、涙液膜の破壊により干渉が起こっていない黒い領域が広がっていくことがわかります。最後に瞼を閉じることで、明るい領域が急上昇していますが、瞼の皮膚からの反射量が増えたためで、1回の計測が終了したことを示しています。
以上の結果から,試作したシステムにより,瞬目機能と涙液膜の安定性を非接触かつ定量的に評価できることが示されました。本システムをさらに機能を発展させることにより,ドライアイをはじめとする眼表面疾患の診断支援や経過観察,さらには在宅医療や遠隔医療への応用も期待されると考えられます。

口頭発表
東山通大, 内田裕久 他,”瞬目検出と涙液膜動態解析を用いた眼表面状態評価システムの検討”, 電気・電子・情報関係学会 東海支部連合大会, 2026/8/30-31予定.
